悩めるママの子育て徒然日記

30代主婦 三児の母 趣味は料理、散歩、読書 旦那さんからは『悩むことが趣味』と言われている

卒園式

「三年間なんて、あっという間よ」

 上の子ちゃんが幼稚園に入園した時、言われた言葉だ。そんなものかなと思っていたけれど、私にとってはあっという間ではなかった。

 先日、上の子ちゃんの卒園式が行われた。コロナ禍のため、開始時間をずらし、クラスごとに行われた。同居家族二人までよいとのことだったので、夫婦で参加した。

 卒園式の時には泣いてしまうかな。そう思って望んだ卒園式。振り返れば、入園してからずっと走り続けてきた。

 入園前、おむつが取れず、遅寝遅起きの上の子ちゃん。環境の変化に弱くて、音に敏感。そのうえ、とても恥ずかしがり屋で、他人が近づくと硬直する。幼稚園での生活は、まさに劇薬の中に子供を投入するようなものじゃないか、などと入園前から心配していた。

 そして、始まった幼稚園生活。予想通り、最初から大変だった。なかなか新しい環境に馴染めず、頑なに今までの生活習慣を変えようとしない。色々と幼稚園で受ける刺激が強かったのだろうか。毎日、三十分ほどの夜泣きが始まり、そのうち体調を崩すようになり、それからは、風邪、風邪との闘いになった。

 副園長先生からは「三か月ほどすると、風邪も治まってきますよ」と言われたが、治まることはなく・・・。ずっと、看病に明け暮れる日々。風邪のため幼稚園を欠席することが多いため、友達もなかなかできず、ついには、幼稚園へ行きたくないと泣き出すようになった。

 この子にはまだ幼稚園での生活が早かったのではないか・・・。そんな考えが幾度も頭の中をよぎった。

 ただ、「いってらっしゃい」と幼稚園へ送り出すことがどれほど難しいことなのか。嫌と言うほど痛感した。

 そして、コロナの流行。幼稚園がしばらく休園になった。子供ちゃん達が家に居ても退屈しないよう、一緒に料理したり工作したり、毎日、子供ちゃん達と何をして遊ぶのか考えるのに明け暮れた。

 少しコロナが落ち着いて、幼稚園が始まった。しばらく幼稚園に行っていなかった上の子ちゃん。「幼稚園へ行くよりもおうちの方が楽しい」と行くのを渋った。心細げな顔で幼稚園へ向かう上の子ちゃんを、幼稚園へ送り出すのは辛かった。

 でも、この時、心を鬼にしてよかったのだと今なら思う。まだ体調が不安定で、一か月に何度も風邪で幼稚園を休んでいたけれど、そんな上の子ちゃんにも少しずつ、友達が出来てきたのだ。友達ができたら、だんだん、自信がついてきたらしい。いつのまにかトイレにも行けるようになったし、遅寝遅起きの生活習慣も改善されてきた。

 年長さんになっても、相変わらず体調を崩しやすかった。ただ、幸い、年中さんの時に仲の良かった子と同じクラスになれた。そのおかげで、毎日、嫌がらず幼稚園へ行った。そのうち、友達も増えてきたみたいで、その日に幼稚園であったことを少しずつ話してくれるようになった。また、幼稚園が終わった後、お友達と公園で遊ぶようになった。

 夏休みに入り何日かたった頃、上の子ちゃんがぽつりと呟いた。

「幼稚園でお友達と遊びたいな。家に居てもつまらない・・・」

 寂しいような、でも、嬉しい気持ちだった。ようやく、幼稚園に上の子ちゃんの居場所ができたのだ。ずっと重かった肩の荷をようやく降ろせた気がした。

 それからは、あっという間だった。コロナで行事は減ってしまったが、上の子ちゃんは幼稚園生活をたっぷりと満喫していた。私も、この頃になってようやく、幼稚園へ送り出すという生活が当たり前のようになってきた。担任の先生からも、「小学校に行ってもちゃんとやっていけますよ」と太鼓判を押してもらえた。

 そして、卒園式。入園時はおどおどと落ち着きのなかった上の子ちゃんは、壇上で堂々と感謝を述べ、賞状を受取っていた。この三年間、本当に本当に大変だったけれど、立派に乗り越えた上の子ちゃんは、私の目に一回りも二回りも成長してみえた。不思議と涙は出なかった。三年間やり切ったという充実感で胸がいっぱいだった。あっという間と言う言葉では足りない、中身のたっぷり詰まった三年間だった。

 式終了後は園庭で写真撮影をした。沢山のお友達と写真を撮った。

「そろそろ帰ろうか」

 そう声を掛ける度、上の子ちゃんは帰ることを渋った。

 幼稚園を出てからも、名残惜し気に何度も幼稚園の方を振り返る。

「卒園するの、嫌だな」

 上の子ちゃんがぽつりと呟く。そうだね、でも・・・。

「幼稚園へ行きたくない、お友達ができないってずっと泣いてた上の子ちゃんの口から、そんな言葉が聞けてママは嬉しいよ。上の子ちゃんにとって、幼稚園が楽しいところになってよかった」

 上の子ちゃんが俯く。

「小学校へ行っても、また、お友達できるかな」

「大丈夫。幼稚園でお友達いっぱいできたじゃない。きっと、小学校へ行ってもお友達いっぱい作れるよ」

 四月から、新しい生活が始まる。きっとまた、沢山の困難もあるだろう。けれど、あなたなら、きっと乗り越えて、大きくなっていくでしょう。

 少し心細げな上の子ちゃん。あなたの成長をママもパパも楽しみにしてるよ。