休み時間の過ごし方
最近、我が家の夕飯時は賑やかだ。子供ちゃん達がそれぞれ小学校と幼稚園へ行くようになったから、食卓では、今日、何をしてきたのかが話題になる。
早速、上の子ちゃんに「今日は学校で何をしたの?」と質問すると、下の子ちゃんが聞いてと言わんばかりに、身を乗り出してきた。
「お人形遊びとおままごと」
「お友達と遊んだの?」
「うん」
「楽しかった?」
「うん」
「よかったねえ。その子のお名前、分かる?」
「わかんない」
「そっか」
どうやら、まだ、名前を呼び合うという仲ではないようだ。
先生からは、まだ子供たち同士、個々で遊んでいると聞いている。なので、まあ、これから、ゆっくり仲良くなっていけばいいかなと思う。
下の子ちゃんは、それから、今日、幼稚園で習ったという歌を披露してくれた。
上の子ちゃんが「それ、私も幼稚園で習った」と言い、一緒に歌い出す。
二人が楽しそうに歌うから、聞いてる私もなんだか楽しくなってくる。
二人が歌い終えた後、もう一度、上の子ちゃんに話を振ってみる。
「上の子ちゃんは何したの?」
「国語を1ページやった」
「どんなことをしたの?」
「ピンクの傘を持っている子はどれでしょうとか」
「上の子ちゃんは見つけられた?」
「うん。それで、手を挙げた!」
「すごいね。手を挙げられたんだ」
うん、と、上の子ちゃんが得意気に頷く。私はその様子にホッと胸を撫で下ろす。
上の子ちゃんはどちらかというと、環境の変化に敏感で慣れるまでに時間がかかる。
幼稚園に入園したときは、幼稚園生活に慣れるまで、随分苦戦していた。
でも、今の上の子ちゃんからは全くそのような感じがしない。
幼稚園でしっかり揉まれ、知らぬ間に頼もしくなっている。
「じゃあ、休みの時間は何をしているの?仲のいいお友達とおしゃべりしたりするのかな?」
「う~ん」
上の子ちゃんが少し考え込む。
「おしゃべりは席の近くの子としかできないから・・・」
私は上の子ちゃんの意外な答えに、「えっ。そうなの?」と少し驚く。
「席を立っておしゃべりしに行っちゃいけないの?」
「みんな、してない」
「じゃあ、みんなは何をしているの?」
「お外へ行くか、席に座って近くの子とおしゃべりするか、本を読んでる」
なるほど、と私は頷く。
私の知っている休み時間の過ごし方とは、少し異なるようだ。
もしかして、コロナの関係で先生から指導を受けているのだろうか。
一応、聞いてみる。
「先生に休み時間はそうするよう言われているの?」
「そうじゃない」
じゃあ、どういうことなのだろう。頭の中に疑問を残しつつ、もう一つ気になることを聞いてみる。
「それで、上の子ちゃんは何をしているの?」
「難しい計算を考えてる」
よく分からない。おそるおそる聞いてみる。
「それは一体何だろう?」
「例えば、24×7」
「・・・」
「まず、4×7=28だから、2が上にいって・・・」
上の子ちゃんが説明を始める。私は黙って、上の子ちゃんの説明を聞く。そして、上の子ちゃんが答えを出したのを見計らって、聞いてみる。
「それ、頭の中でするの?」
「うん」
「それ、面白い?」
「うーん。面白いというよりは、暇だから」
そっか、と私は相づちを打つ。そして、心の中で、あなたは時間つぶしに、計算ができるのね、と呟く。
私は時間つぶしに計算しようなどとは思いつかないから、その心境が全く分からない。
ふと、子供の頃、母にやらされていたゲームを思い出す。電車の待ち時間、切符に印刷されている4つの数字と+などの計算記号を使って、答えを10にするのだ。その時々によって、どちらが早くできるかだとか、どちらが多く10になる式を作れるかだとか、勝つ条件が変わる。
母は私を巻き込んで嬉々としてやっていたけれど、私は物語を考えている方が楽しかったから正直、迷惑だった。
だから、まさか、上の子ちゃんがそういう子に育つなんて思わなくて、ちょっぴり驚いている。
もしかして、上の子ちゃんなら、母のゲームを面白がってやるのだろうか。
私も一緒にはごめんだけれど、今度、電車に乗る機会があったら教えてみようかな。
それにしても、時間のつぶし方って、本当に人それぞれ違うのね、などと、改めて思わされたのだった。
学校での休み時間の過ごし方が少し気になって、後日、先輩のお母さんに聞いてみた。今年は分からないけれど、去年までは自由に過ごしていたよ、とのことだった。だから、もしかしたら、まだ、みんな、どう過ごせばいいのか、戸惑っているのかもしれないね、と。
確かに、始まったばかりだから、みんな周りの様子を伺っているのかもしれない。もう少し時間が立てば、きっと、みんな打ち解けて、休み時間はもっと賑やかになるのかな。
入学するまでは、お友達ができるのかなと心配していた上の子ちゃん。始まってみれば、少しずつ友達の輪が広がっているようだ。大変なことも色々あるだろうけれど、まずは一年間、楽しく過ごすことができるといいね。