悩めるママの子育て徒然日記

30代主婦 三児の母 趣味は料理、散歩、読書 旦那さんからは『悩むことが趣味』と言われている

いい子

「あの子たちは本当にいい子ねえ」

旦那さんのおかあさんが、何気なく言う。

私はどきりとしてしまう。

おかあさんはただ、褒めてくれているのだと分かっている。

けれど、私は素直に喜ぶことができない。

 

『いい子』

私もかつては『いい子』だった。

大人のいう事をよく聞く子。

大人の手を煩わせない子。

裏を返せば、大人の顔色を窺い、大人が望むように振舞う子。

大人にとって、都合の『いい子』

別に、好きでやっていたわけではない。

ただ、両親に怒られるのが怖かっただけ。

ただ、両親に褒めてもらいたかっただけ。

けれど、両親の求める『いい子』は年を経るごとに、本来の私とかけ離れていく。

演じれば演じるほど苦しくなって、やがて、私とは違う他の『誰か』の人生を生きている気がしてきた。

私は誰?

何が好き?

何がやりたいの?

両親の考えていることは手に取るようにわかるのに、

自分自身のことがまるで分らない。

空っぽの私。

ある日、何かがぽきりと折れた。

その瞬間から、何もできなくなった。

両親は戸惑い、やがて、「どうしてできないのだ」と責め立てた。

私自身も分からない。

自分の中を何度も探った。

恐ろしいほどに何も出てこない。

虚しい。ただ、虚しい。

 

私は完全に、燃え尽きていた。

 

それから、しばらく部屋に引きこもった。

家の中は決して居心地のいいものではなかった。

なんとか自分を再構築しようと思って、外に飛び出した。

けれど、一度レールを踏み外した人間に、社会は冷たかった。

理解してくれる人も、もちろんいた。

けれど、心無い言葉を掛けてくる人の方が多かった。

前を向こうと思っているのに、いつも過去に引き摺られ、後悔の渦にのみ込まれていく。

生きたいと願っているのに、生きることに投げやりになっていく。

心の中はいつも葛藤していた。

 

そんな中、旦那さんと出逢った。

結婚して、夫婦になって、子供が生まれた。

生まれたばかりの子供を腕に抱いた時、生きて欲しいと思った。

しっかりと、自分の人生を生きて欲しい。

そのために、どうすればいいだろうと考えた。

子供は親の背中を見て育つ。

それならば、私自身がしっかりと生きていく姿を見せなければと思った。

それから、何か特別なことをしたわけではない。

ただ、子育てをしてきた。

沢山悩んで、泣いて、笑って。

私なりに真剣に子供と向き合ってきた。

その日々は大変なことも多かったけれど、とても充実していて、初めて自分の人生を生きている気がした。

 

そんな中、ふと耳に入った『いい子』という言葉。

昔の自分が子供達と重なり合う。

私は子供達を自分の枠にはめようとしていないか。

この子たちを自分の都合の『いい子』にしていないか。

急に不安になってくる。

 

夜、ほっと一息ついて床に座り込む。

すると、下の子ちゃんがやってきた。

「ママ、いい子いい子して」

床にごろりと寝転がり、私の膝にちょこんと頭を乗せる。

頭を撫でてやると、「いい子って言って」と要求される。

いい子。

どういう子のことをいうのだろう。

心が優しくて、素直な子?

そんな意味合いなら、まだ、受け入れられる。

「いい子、いい子。本当にいい子」

下の子ちゃんの頭を撫でながら、つい、願ってしまう。

 

この言葉があなたの生き方を縛り付ける鎖になりませんように。

あなたはあなたの人生をしっかりと生きてゆけますように。