夜のお買い物
買い物へ行った。
子供ちゃん達も一緒だ。
コロナ禍になるまでは、当たり前のように家族みんなで買い物へ行っていた。
今は、仕事帰りの旦那さんに、全部お任せしている。
だから、私も子供ちゃん達も本当に久しぶりのお買い物だった。
今回の一番の目的は、上の子ちゃんのスクール水着だ。
さすがに、着てみないと合うサイズが分からないから、一緒に連れて行くことになったのだ。
ついでに、他にいる物をリストアップしていく。
気づけば、あっという間にメモ用紙が埋まっていた。
これ、全部、揃えられるかな・・・。
買い物に行くことを伝えた際の、子供ちゃん達のはしゃぎっぷりを見ていると、まあ、無理だろうなあ、と予想がつく。
買い物は、夕食後に行く。
お店にあまり人がいないからだ。
一応、三回、コロナワクチンの予防接種は打った。
けれど、私も、そろそろ妊娠後期。
妊娠後期は特に免疫が下がって重症化しやすいらしいので、警戒している。
子供ちゃん達はお店に着くと、我先にと駆け出していく。
まずは、入り口でアルコール消毒。
お店の中に入ると、早速、展示してあるものを物色してゆく。
「ママ。この服いいんじゃない?」
下の子ちゃんが、私に細身の可愛らしい服を勧めてくる。
いや、ママ、今、お腹大きくて着られないよ・・・。
目的地は一つ上の階なので、エレベーターに乗ることにする。
「こら、こら。エレベーターに乗りますよ」
散り散りになる子供ちゃん達を集めて、エレベーターに乗せる。
「あっ。アイスクリーム!」
エレベーター内に掲載されている、フロアマップを見ていた上の子ちゃん。
真っ先に反応した文字は、サーティー〇ンのアイスクリーム。
「アイス、食べたい。食べたい」
下の子ちゃんも一緒に騒ぎ出す。
なかなか来られないし、食べさせてあげても良いかな。
気持ちは一瞬揺らぐけれど、心を鬼にする。
そもそも、閉店ぎりぎりの時間に来ているのだ。
食べていたら、それだけで終わってしまう。
あくまで、今日の目的は、上の子ちゃんの水着だ。
上の階に着く。
エレベーターの扉が開くと、真っ先にゲームセンターが見えた。
子供ちゃん達の足が止まる。
「早く。行くよー」
下の子ちゃんはついてくるけれど、上の子ちゃんは釘付けになったまま、微動だにしない。
どんどん、私達との距離が離れていく。
「水着、買えなくなるよー」
上の子ちゃんが渋々といった感じで、歩き始める。
着いたお店は閉まっていた。
学校関連の物が置いてあるお店だ。
ただ、中を覗いてみると、制服や体操服はあるが、水着らしきものは見当たらない。
このお店に行く途中で、スクール水着のコーナーが設けられていたことを思い出す。
学校からの指定もないし、そちらで良いのかもしれない。
売り場の店員さんに聞いてみると、水着は基本、そのコーナーで取り扱っているようだった。
早速、水着が展示してあったコーナーへ引き返し、水着を選ぶ。
といっても、スクール水着だから、色もデザインも限られている。
上の子ちゃんにどれがいいかを確認し、試着してもらう。
その間に、下の子ちゃんは自分の水着を選んでいる。
「これ、どうかな」
残念ながら、小学生用なので下の子ちゃんのサイズに合う水着はないし、そもそも、下の子ちゃんには上の子ちゃんのお古がある。
これって、下の子の定めだよな、と思いつつ、ちょっと下の子ちゃんが可哀想になる。
上の子ちゃんの水着のサイズを確認する。
上の子ちゃんはノリノリで、試着室の鏡の前で一丁前にポーズまで取ってみせてくれる。
サイズを決めて、試着室を出る。
下の子ちゃんが、何やら手に持っている。
どうやら、下の子ちゃんはめげていなかったらしい。
私の目の前に、ビーチサンダルを突き出す。
「ママ、これ欲しい」
水着の試着が終わった上の子ちゃんも、それを見て、「欲しい」と言い出す。
そして、「どこにあったの?」と、私が止めるのも聞かず、ビーチサンダルの置いてある場所へ行ってしまう。
上の子ちゃんがビーチサンダルを選んでいる。
「待って。それ、いつ履くの?」
一応、確認する。
小学校や幼稚園に履いていけないし、夏休みに公園へ行くときだろうか。
でも、たいてい、公園へ行くと、子供ちゃん達は砂場で遊ぶから、サンダルでは砂まみれになってしまう。
「海に行くんだよ」
「そう。海に行くの!」
・・・いつ、行くんだ?
子供ちゃん達の答えに、戸惑う私。
今年の夏休み?お腹大きいのに?海?行けるのか、私・・・。
いや。そもそも、「今年、海へ行こう」と言った覚えすらない。
「行けるにしても、一回くらいだろうし、そのためにサンダル買うのも、ね」
子供ちゃん達は、特に下の子ちゃんは不満顔だ。
困ったな。
そこで、ふと、いいことを思いつく。
「そうだ。下の子ちゃん、長靴探そう!」
下の子ちゃんの長靴は、ボロボロだ。
上の子ちゃんのお古だからではない。
下の子ちゃんはなぜか、長靴が大好きで、幼稚園に入るまでずっと、外出の際は長靴を履いていた。
もちろん、公園で遊んでいる時も、だ。
そのおかげで足が鍛えられたのか、下の子ちゃんは走るのが結構速い。
予定外ではあったけれど、みんなで長靴コーナーへ行く。
意外にも種類が少なくて、下の子ちゃんの好きな色がない。
「また、今度、違うところで買おうか」と提案してみる。
下の子ちゃんは首を横に振り、「これで良いよ」と並べてある一つを指さす。
それから、もう少しだけ子供ちゃん達の日用品を揃える。
その間にも、子供ちゃん達の「これ買って」攻撃が炸裂する。
結局、メモ紙に書いた物の半分も買えず、家に帰ることにした。
できれば、夏に生まれてくる子の日用品とか、私が産院に入院するときに必要なものとかも買いたかった。
でも、そんな余裕は全くなかった。
「もし、お休みが取れたら、平日に買いに行かない?」
旦那さんに提案する。
そうしないと、全部買い揃える前に、出産になってしまう気がする。
車に乗り込んで、時計を見ると、思っていたよりも時間が遅くなっていた。
上の子ちゃんが「眠い~」と言い始める。
そりゃあ、散々、はしゃいだのだもの。
できれば、ママはもっと早く帰りたかったよ。
私も疲れたのか、お腹が少し張って、気持ちも悪くなってきてしまう。
家に着くと、旦那さんが子供ちゃん達をお風呂に入れてくれた。
「今日のお買い物、とっても楽しかったよ」
お風呂から、子供ちゃん達の声が聞こえてくる。
そんなこと言われてしまうと、大変だったけれど、連れて行って良かった、なんて思えてしまうから不思議だ。
休日、旦那さんがちょっとでも外出しようとすると、それを察して、一緒に連れて行ってもらおうと準備する子供ちゃん達。
お出かけすることに、子供ちゃん達は飢えている。
この数年間、出かけたところと言えば、旦那さんの実家と私の実家と私の祖母の家くらい。
でも、本当は、子供ちゃん達を連れて行きたいところが沢山ある。
子供ちゃん達が少しでも喜びそうだなっと思ったところは、全部、ファイリングしてあって、そのファイルはパンパンに膨らんでいく一方だ。
「コロナが終わったらね」
合言葉のように何度も繰り返して言っていたから、いつしか、子供ちゃん達も「どこか行きたい!」と言う前に、必ず『コロナが終わったら』を付け加えるようになった。
そして、それらはまだ、一つも実現していない。
段々と夏休みが近づいてきている。
私にとっては、一番注意すべき時期だ。
でも、二人とも、きっとどこか出かけたいだろうな。
そう思うと、チクリと胸が痛む。
せっかくの夏休み。
できれば、子供ちゃん達に楽しい思い出を作ってあげたいけれど。
何か、いい案はないかなあ。
夏休みに向け、欝々と悩んでいる私であった。