悩めるママの子育て徒然日記

30代主婦 三児の母 趣味は料理、散歩、読書 旦那さんからは『悩むことが趣味』と言われている

勢力争い

 夜、トイレに行きたくて目が覚める。

 お腹が大きくなってきたおかげで、お腹の下部が圧迫されている。

 パンパンに張ったお腹で、よいしょ、と上半身を起こす。

 お腹の下部がきりきりと痛む。

 無事、トイレを済ませる。

 お風呂からシャワーの水音が聞こえる

 旦那さんがお風呂に入っているのだ、と気づく。

 時計を確認すると、深夜一時前。

 もうひと眠りできそうだ。

 一応、子供ちゃん達の様子を確認する。

 二人とも、布団から飛び出して、それこそ、真ん中で身を寄せ合って眠っている。

 敷布団を三枚並べて、両端に寝かせているはずなのに、眠っている間も本当に仲が良くて微笑ましい。

 でも、このまま放っておくと、いずれ、どちらかが下敷きになって泣きだす恐れがあるので、少し離しておく。

 自分の布団にごろりと寝転がり、抱き枕を傍に寄せる。

 最近は、横向きでないと息苦しくて眠れないし、抱き枕は必須だ。

 だんだん眠気が襲ってきて、欠伸も出てくる。

 今日も上手く寝付けそうだ。

 ボンっ。

 お腹の内側に鈍い衝撃が走る。

 ボン。ボン。ボン。

 ああ、起きてるんですね、と思う。

 なだめるように、ポンポンとお腹を軽く叩く。

 ボン。ボン。ボン。

 また、振動が返って来る。

 そのまま放って寝てしまおうと思ったが、今日はやけに激しい。

 お腹の中を縦横無尽に蹴り?まくっている。

 しかも、まったく、静まる気配がしない。

 今日に限って、この子、どうしたのかしら。

 泣いている赤ん坊なら、抱っこしてあやすことはできるけれど、お腹の中の子はどうすればいいのだろう。

 とりあえず、蹴られる度、何度もお腹を軽く叩いてみるがお気に召さないらしい。

 眠たいのに眠れない。

 それどころか、だんだん、気持ち悪くなってきた。

 身体の向きを色々と変えてみる。

 それでも、胎動は激しく伝わってきて、ついには「うっ」と吐き気が込み上げてきた。

 困ったな・・・。

 旦那さんが、お風呂からあがる気配がする。

 ふらふらと立ち上がり、旦那さんの元へと行く。

「胎動が激しすぎて眠れない」

 自分ではどうしようもできなくて、旦那さんに助けを求める。

 でも、旦那さんだってそんなこと言われても困るだろうな、と思う。

「それは大変だね」

 お風呂上がりの旦那さんと一緒に寝室へ向かう。

 寝室に入ると、旦那さんは私と同じように子供ちゃん達を眺め、「本当に、仲がいいな」と感想を漏らす。

 さっき離しておいたはずなのに、もう、くっついている。

 旦那さんは子供ちゃん達を抱え、それぞれの布団へ戻す。

 そして、寝転がった私のお腹に手を当てた。

 さっきまでの激しい胎動が、嘘のようにぴたりと止む。

 不思議なのだけれど、ぽこぽこと動き回っている時に、子供ちゃん達や旦那さんが手を当てるとしばらく静まるのだ。

 まるで、こちらの様子を伺っているように。

 そして、また、今度は遠慮がちにぽこぽこと動き始める。

 旦那さんは、私のお腹に手を当てながら話しかける。

「君も夜が強いねえ」

 ぽこっとお腹が動く。

「でも、夜は早く寝ないといけないよ。まあ、僕が言うのもなんだけれど」

 旦那さんは夜型だ。

 上の子ちゃんも、小学校へ行くまでは夜型だった。

「今日は、動き足りなかったかな?」

 なんだか、もぞもぞしている。

「もしかして、寂しかった?」

 ぼんっと力強く蹴られる。

 一瞬、言葉がわかるのかしらんと思ってしまう。

「まあ、うちの子ちゃん達はみんな、寂しがり屋だからねえ」

 それから、しばらく旦那さんはお腹に話しかけていた。

 そしたら、胎動も少しずつ治まってきた。

「そろそろ、眠くなったかな」

 旦那さんがお腹から手を外す。

「ありがとう」

 私はお礼を言い、身体を横に向ける。

 これなら、眠れそうだ。

 たまたま、タイミングがあっただけかもしれないけれど。

 お腹に話しかけるのは案外、効果的なのかもしれない、と思う。

 そして、今日のことを振り返る。

 私、そんなにも、この子に構ってあげてなかっただろうか。

 いつもどおり、手が空いている時に胎動を感じたら、ポンポンと叩き返していたはずだ。

 ただ、今日は、みんな、お風呂に入るのが遅かった。

 いつもは、お風呂から上がると、しばらく椅子に座って、休憩がてらお腹をぽんぽんと叩く。

 お風呂に入ってから、出てしばらくの間、胎動が続くからだ。

 まだ、子供ちゃん達が起きている時は、子供ちゃん達も一緒にお腹に手を当てて話しかける。

 でも、今日は遅かったから、お風呂から出て早々に寝てしまった。

 もしかして、それのせい?

 

 ふと、三人の子を育てているお宅にお邪魔した時のことを思い出す。

 元気な子たちで、上の子二人は部屋の中を動き回っていた。

 それだけでも、私から見ればカオスの状態。

 さらに、まだ歩けぬ一番下の子は、椅子に座って大きな声で泣いていた。

 お母さんが、疲れのにじんだ声で言う。

「このまま泣き疲れて、眠ってくれないかしら」

 初めての子なら、すぐ抱き上げてあやしているだろう。

 でも、三人目ともなると、こうなってしまうのかもしれない。

 子供が増える度、お母さんも学習し、段々と、手の抜き加減が分かってくる。

 一番下の子は、延々と泣き続ける。

 兄弟が多くなればなるほど、強く主張しないと構ってもらえない。

 帰り際、一番下の子に声を掛けた。

「逞しく生きるんだよ」

 

 そして、今。

 まさに、その状況じゃないか?

 

 とりあえず、このまま毎晩、胎動が激しいのは困る。

 なので、今夜は早めにお風呂へ入って、お腹の子に構ってあげる時間を作ろうと思う。

 それから、少し恥ずかしいけれど、旦那さんがしてくれたように、話しかけてみよう。

 子供が二人から三人になり、子供ちゃん達との関わり方がどう変わっていくかは、まだ、わからないけれど。

 もうすでに、少しずつ、変化しているような気がしてしまうのであった。