甘い物
我が家は、子供たちに砂糖を多く使ったお菓子類をあまり食べさせないようにしている。理由は二つだ。一つ目は、小さいうちから甘いものを食べさせると、虫歯になりやすいというような記事を何かで読んだことがあるから。そして、二つ目は、小さい頃から、なるべく素材本来の味に慣れ親しんで欲しいと思ったからだ。
私は小学生の頃に、食物アレルギーと診断された。まだ、食物アレルギーのことがあまり分かっていなかった時代である。食物アレルギーと診断はされたものの、原因の食べ物が何かについては、検査でわからなかった。医師の説明によると、私の場合は、ある程度成長してから発症したため、検査では反応が出ないというのだ。
その結果、まずは、アレルギーの原因と考えられている食べ物を全て除去することになった。そして、しばらくたった後に、今度は少しずつ、除去した食べ物を食べていき、何に反応するのかを調べていくことになった。
小麦、大豆、乳製品、卵、青魚、鶏肉、牛肉・・・etc。色々なものが突然、食べられなくなった。砂糖も良くないため、控えるように言われた。
その日から食生活が一変した。私の食べるご飯は全て、母が作るものになった。学校の給食はお弁当に変わり、おやつも全て手作り。外食もできなくなった。その中で、一番つらかったのは、おやつだ。今まで、バターや砂糖、添加物などをたっぷりと付与したお菓子を食べてきた私にとって、サツマイモやカボチャ、レーズンなどの自然の甘みだけを使った素朴なお菓子は実に味気なかった。
何度も、ケーキやアイスクリームを食べる夢を見た。時々、我慢できず、母が外出している時を見計らって、家に置いてあるお菓子を食べてしまったこともあった。
しばらく、そのような食生活が続いた後、今度は少しずつ除去してきたものを食べていくことになった。日に日に、食べられるものが増えていった。そして、ある日、母が、お店で売っているディニッシュを買ってきてくれたのである。
とても嬉しかった。久しぶりに食べられるのだ。アレルギーが出るかもしれないという不安はあったが、それ以上に、食べたいという欲求が上回った。
私は、母が買ってきてくれたディニッシュに大きく齧り付いた。
あれ?
違和感があった。もう一口、齧って確信した。
くどい。そして、甘すぎる・・・。
結局、三口目で食べるのを止めた。いや、それ以上、食べられなかったのだ。
その時、こう思った。
私は今まで、こんな甘いものを食べていたんだ・・・。
驚いた。以前は当たり前のように、「美味しい」と感じ、全て平らげた。けれど、改めて食べてみたら、まるで感覚が違うのだ。
慣れというものは恐ろしい。そう、思い知らされた。
現在、我が家のおやつの定番は、サツマイモや味のついてない炒り豆、ナッツなどである。クッキーやケーキを作る時は、甘みをバナナやレーズン、甘酒等でつけ、ホットーケーキミックスを使用するときは、使用する量を少なめにして、代わりに全粒粉や大豆粉、おからパウダーなどを加える。そして、お団子や寒天には砂糖なしのきな粉をたっぷり振りかける。
勿論、毎日このようなおやつではない。市販のクッキーやビスケットを出す時もあるし、誕生日にはケーキやアイスクリームを買うこともある。ただ、それらを食べる頻度は比較的少ない。
母からは、「そうやって我慢させていると、お友達の家などで出された時に、反動で、たくさん食べてしまうのでは?」と言われたことがある。そのことは、私もずっと懸念していたのだが・・・。
そこで、今の子供ちゃん達の状況である。
子供ちゃん達は二人とも、お砂糖をたっぷり使った甘いものが大好きだ。
上の子ちゃんは、少し前までは、懸念していた通り、甘いお菓子を出されると結構、量を食べていた。ただ、ある日、「ママ、甘いものは身体に良いの?」と聞かれたから、私は、「甘いものは脳のエネルギーになるから必要ではある。けれど、食べ過ぎると太ったり体の調子が悪くなったりする。だから、甘いものの取り過ぎには注意しようね」と返した。すると、それ以来、出されたお菓子に対して、自分で量を調整しながら食べるようになった。
下の子ちゃんはというと、食べることは食べるし、まだ自分で調整することはできない。ただ、普段、食べ慣れていないせいか、少し食べると「甘い」と言って残す。なので、今のところ、食べ過ぎることはない。
いつか親元を離れ、独り立ちしていくであろう子供達には、できれば、小さいうちから身体にやさしい食生活を身につけていって欲しいと思っている。なぜなら、生きていくうえで、「食」というものは欠かせないからだ。せっかく独り立ちできたとしても、食が乱れ、身体を壊してしまったら、元も子もない。そのために、今、私ができること。
色々なご意見、お考えがあると思う。なので、あくまで、『我が家の方針』ということで、ご理解いただけたらと思う。