悩めるママの子育て徒然日記

30代主婦 三児の母 趣味は料理、散歩、読書 旦那さんからは『悩むことが趣味』と言われている

幼稚園をお休みした日

 月曜の朝はなぜか、上の子ちゃんも下の子ちゃんもぐったりしている。

 何度か声掛けして、ようやく上の子ちゃんが起きてくる。下の子ちゃんはまだ、ぐっすり夢の中。

「今日から幼稚園だけれど、行ける?」

 下の子ちゃんの頬をつんつんと突きながら聞くと、眠たげな眼をこすって頷く。急いで服を着替えさせて、食卓へ連れて行く。朝は本当に忙しい。

 上の子ちゃんを、無事、学校へ送り出し、家事をしながら下の子ちゃんとバスの時間がくるまで待つ。

 ピロリン。

 アプリの通知音が鳴る。幼稚園からだ。急いで確認する。

 どうやら、下の子ちゃんのクラスからコロナ陽性者が出たようだ。お休みを挟んでいるし、どこで感染したかは分からないけれど、クラス内の感染だったら怖いな、と思う。

 特に、年少さんはまだ、マスクをきちんとつけているか分からないし、もしかしたら、まだ発症していない子もいるかもしれない。もちろん、それは下の子ちゃんも含まれるわけで・・・。

 まあ、具合が悪くなったら、その可能性を考えないといけないってことだよね。

 そう思いながら、旦那さんに幼稚園に行かせるかの相談をする。下の子ちゃんの気持ちを考えると、行かせてあげたいけれど、念の為、今日はお休みさせることにした。

 下の子ちゃんは、せっかくお仕度したのに、幼稚園に行けないと分かってしょんぼり。本当にごめんね。でも、こればかりはしょうがない。

 今日は少しのんびりできるかなと思っていたけれど、予定変更。下の子ちゃんが、家で楽しめることはないかと考える。あいにく今日は雨だから、公園には行けないし、下の子ちゃんの好きなアニメを少し見せて、それから、簡単なクッキーでも作ろうかと思い立つ。

「下の子ちゃん、クッキー作ろうか。ただし、食べるのはお昼ご飯の後ね」

 下の子ちゃんの顔がぱっと輝く。早速、二人で手を洗い、クッキー作りの準備をする。

 作り方は、とっても簡単だ。ビニール袋を用意する。そこに、全粒粉と大豆粉、それから少しの米粉ホットケーキミックス粉と塩を入れる。分量はいつも適当。全部入れたら、袋の口を閉めて振る。粉が混ざったら、こめ油と牛乳を入れて、袋の上から揉む。生地がまとまったらオーブントースター用の天板に広げて、フォークで切れ目を入れる。後はオーブントースターに入れて、表面にこんがり焼き色がつくまで焼く。

 ビニール袋を使うという点では環境に優しくないクッキングだけれど、汚れものが出ないし、後片付けも楽だから、小さな子供と作るにはお勧めだ。

 下の子ちゃんは、「ふりふり~」とか「まぜまぜ~」とか楽しそうに歌いながら袋を振ったり、こねたりしてくれる。

 オーブントースターに生地を入れると「私が焼けるか見てあげるね」と下の子ちゃんがクッキーの番を買って出てくれた。お願いして、その間に朝食を食べる。

 しばらくすると、飽きたのか「あとはママに任せる」と言われたので、ちょこちょことトースターの中を確認しながら、ご飯を食べる。両面に奇麗な焼き色がついたので、トースターを止める。下の子ちゃんにばれないように、ちょっぴり、クッキーの味見をする。

 カリッ。甘みはほとんどないけれど、噛むほどに、全粒粉や大豆粉の香ばしさやうま味が出てきて、ついもう一口食べたくなる。けれど、調子に乗ると、血糖値が上がってしまうので、そこはぐっと我慢する。

 以前はもう少し、子供ちゃん達と一緒にお菓子作りをしていたけれど、最近はめっきり作らなくなってしまった。作ると、つい、私も食べたくなってしまうからだ。

 さてと。朝食を食べ終えた後は、足踏み運動。下の子ちゃんは退屈なのか、私の足に絡みついてくる。

「ごめんね。ママ、血糖値下げるために歩かなきゃいけないの」

 謝りながら、足を必死に動かす。下の子ちゃんは足に絡みつくのを止めて、近くにあったマットを部屋の角まで移動させた。そして、よいしょっ、と言ってマットを立てて内側に入っていった。

ちびっこハウス!」

 中を覗くと、下の子ちゃんがごろりと寝転がっている。

「座布団持ってきましょうか」

 お伺いをたてると、「うん」と嬉しそうに頷く。それから、アヒルさんと車と・・・。一気に注文が入る。ちびっこハウスの中はあっという間に玩具で埋まる。

 子供って色んなものを上手に使って遊ぶなあと感心する。

 足踏み運動が終わった後、何して遊ぼうかと聞いたら、お散歩に行きたいと言われる。雨の日のお散歩は、濡れるし、傘が邪魔だし、で私はあまり好きではない。けれど、下の子ちゃんは傘を差すのが大好きだから、雨の中でも全く平気だ。

 気が進まないけれど、幼稚園をお休みさせてしまった引け目があるから、今日はちょっと優しくなる。

「わかった。出かけようか」

 長靴を履いて、マスクをして、傘を持って外に出る。雨は思ったよりも降っていて少し怖気づいてしまうけれど、外に出てしまった以上、引き返せない。

 下の子ちゃんはお気に入りの傘を開いて、雨の中をどんどん歩いて行く。深く水が溜まったところに、わざと進んでいって、バシャバシャと音を立てて歩いたり、持っている傘をくるくると回してみたり、雨の中を十分に満喫している。

 ふと足元に目を移せば、ズボンの片方が長靴から飛び出していて、ぐっしょりと濡れている。家に帰ったら、着替えさせないと、と思いながら、上の子ちゃんに初めて長靴を履かせた日のことを思い出す。

 いつも、雨上がりには水たまりの中へ入ろうとしていた上の子ちゃん。運動靴は水に濡れてしまうから、長靴を買ってあげた。これで、思いっきり水たまりで遊べるだろうと思っていたら、本当に思いっきり水に足を突っ込んだ。ばしゃばしゃと、水たまりの上で跳ねる、跳ねる。五秒も立たず、履いていたズボンはぐしょ濡れ。長靴の中にも水が入りそうな勢いに、堪らず、上の子ちゃんを抱き抱え、急いで家まで走って帰った。

 お陰様で、今はちょっとやそっと濡れたところで驚かない。まあ、こんなものか、と思ってしまう。

 ひとしきり下の子ちゃんが満足したところで、家に戻ることにした。部屋に入って、お着替えをさせたら、急に眠気に襲われた。ごろんと床に横たわると、下の子ちゃんが隣にやってきた。下の子ちゃんを抱き寄せて、目をつぶる。あったかくて、柔らかい。いいなあ、と思いながら、髪をなでなでしていたら、そのまま少し眠ってしまった。

 目を覚ますと、隣に下の子ちゃんはいなくて、代わりにお昼寝用の薄い毛布がぺろんと私の身体にかけられていた。どうやら、下の子ちゃんが出してくれたようだ。下の子ちゃんの優しさに感激しながら、毛布を片付ける。時計を見たら、とっくに十二時を回っていた。

「下の子ちゃん、お昼ご飯食べよう」

 声を掛けると、隣の部屋から下の子ちゃんがやって来た。先に、朝作ったクッキーをひとかけら渡して、それから、一緒に昼食を食べる。途中で、旦那さんが帰ってきて、昼食に合流する。

 昼食後はしばらく足踏み運動をして、それから、上の子ちゃんを学校近くの指定場所まで迎えに行く。家を出ようとしたら、下の子ちゃんが「私も行きたい」と言う。まだ、歩き足りなかったらしい。できれば連れて行きたいけれど、学校まではそこそこ距離があるし、帰りは上の子ちゃん達と同じペースで帰らないといけない。

「もし外へ行きたいなら、パパに連れて行ってもらって」と言い残して、上の子ちゃんの所へ向かう。

 上の子ちゃんと一緒に家に戻ると、ちょうど玄関のところに下の子ちゃんと旦那さんがいた。どうやら、あの後、散歩に行ってきたらしい。掛けられているコートが濡れている。下の子ちゃんは上機嫌。でも、上の子ちゃんの姿を見るなり、ぼそっと言った。

「上の子ちゃんは、小学校に行けていいな。私も幼稚園、行きたかった」

 そうだよね、と思ってしまう。

「ママ、明日は幼稚園、行ける?」と聞かれて、返答に困る。

 どうしよう。行かせてはあげたいのはやまやまだけれど。幼稚園でコロナ感染がどう広まっているか、まだ全く分からないし。

どうしよう、どうしよう。考えても、考えても、なかなか答えは出せなくて。

 

結局、うやむやにしたまま、明日に持ち越しになるのだった。