あれやこれ
幼稚園へ行くようになってから、下の子ちゃんはよく歌を歌うようになった。
朝でも夜でもお風呂の中でも。
楽しそうに歌っている。
どれも、幼稚園で教わってくる歌だ。
ご丁寧に振付までしてくれる。
あまりに楽しそうに歌うから、私もつられて歌ってしまう。
先日、下の子ちゃんの個人懇談があった。
先生から幼稚園での様子を聞く。
おままごとをしたり、工作をしたり。
積極的に、遊んでいるらしい。
最近のお気に入りは、プラレールだそうだ。
ちょっと意外で、驚く。
上の子ちゃんは小さい頃、汽車や乗り物が大好きだった。
だから、我が家にはプラレールが置いてあって、上の子ちゃんはよく遊んでいた。
でも、下の子ちゃんが遊ぶことはあまりなかった気がする。
「へえ、下の子ちゃん、プラレールで遊んでいるんですか」
幼稚園へ行くようになって、色々な刺激を受けているのだなと思っていたら、どうやら、少し違うらしい。
下の子ちゃんのお気に入りはプラレールの『踏切』だ。
その踏切は電車が通ると音が鳴るらしい。
下の子ちゃんはそれを片時も離さず、おままごとをしている時も、工作をしている時も、気が向くと鳴らすのだそうだ。
「どうして、踏切を持ち歩いているの?」と尋ねたら、「面白いから」と言う。
新手の楽しみ方である。
そして、我が家のプラレールの中にもお気に入りを見つけたらしい。
自動ポイントレールだ。
そのレールを横抱きにし、黄色いポイントの切り替え部分をカシャカシャと指で鳴らして、ギター代わりにしている。
もちろん、歌付きだ。
なかなか、様になっている。
幼稚園でも披露したらしく、お友達から「ギター、いいねえ」と羨ましがられたらしい。
何を歌っているのと聞いたら、プ〇キュアとかリュ〇ソウジャーだという。
なんだか、賑やかで楽しそうだ。
一度でいいから、幼稚園で下の子ちゃんが遊んでいる様子を見てみたい。
下の子ちゃんは幼稚園へ行くとき、不織布のマスクをしていく。
リュックの中に数枚、替えのマスクを入れているのだが、必ず、替えのマスクを使ってくる。
本人曰く、「汚れたから替えた」らしい。
でも、朝つけていったマスクを見てみても、汚れている気配はなくて、単に気分の問題なのかな、と思ってしまう。
使い捨てのマスクだから、毎日、名前を書かかなければならないのだけれど、いたずら心で、ある時からちょっとした絵を添えるようにした。
テントウムシとかお花とか。
それが、どうやら、下の子ちゃんのお気に召したらしい。
その日から、マスクを替えることが無くなった。
しかも、生き物を書いた日には、「女の子だから」という理由で、まつげなどを付け足す。
なんだか、化け物みたいになっている。
恐竜を描いたら、なぜか青一色に塗りたくられた。
「どうして、全部塗っちゃったの」と聞いたら、「ハロウィンに出てくる怖い恐竜なの」と言う。
よく分からないけれど、本人はご満悦でつけてくれているので、良しとする。
下の子ちゃんは、ちょこちょこ言い間違いをする。
カエルのキャラクターの『ケロケ〇ケロッピー』を『ケロッパー』と言う。
なんだか最後の響きが可笑しくて、笑ってしまう。
すると、傍に居た旦那さんに「君の血だねえ」と揶揄われた。
確かに、私もよく、どこか言葉がおかしい時がある。
自分でも、違和感を抱くのだけれど、どこを間違えているか分からない。
お陰で、旦那さんからはいつも、「間違い探しのようだ」と言われている。
この間、突然、背後から下の子ちゃんが「くらめしや~。くらめしや~」と言ってきた。
振り向くと、両手を胸の前でだらりと下げてこちらを見ている。
「うらめしや~だよ」と間違いを指摘すると、「くらめしや~だ」と言い張る。
近くで聞いていた上の子ちゃんがすかさず、「下の子ちゃん、うらめしや~だよ」と言う。
すると、どうだろう。
下の子ちゃんは「うらめしや~」言いなおしたのだ。
どうやら、私は下の子ちゃんの信用を失っているらしい・・・。
上の子ちゃんは、分からない問題があると、よく一人で怒っている。
「これ、難しいよ~」から始まり、最終的には「私、馬鹿なんだ~」と泣きながら怒る。
「今日も派手に怒っているね」と呟くと、旦那さんが「君そっくり」と言う。
あまり認めたくないけれど、よく一人で怒っているのは確かだから。
言い返せないのが辛い。
私がよく怒っている時でも、下の子ちゃんはお構いなしに私の所へやって来る。
抱き着いて着たり、お願い事をしてきたり。
あまりにも平然と近寄って来るから、「ママ、今、怒っているのだけれど、怖くないの」と何回か尋ねたことがある。
いつも、「全然、怖くない」と言われる。
多分、私の怒りの矛先が自分に向かないポイントを心得ているのだろう。
そんな下の子ちゃんは、私の胸きゅんポイントもよく心得ている。
時折り、いたずらっ子のような笑みを浮かべ、舌を横にちらりと出してみたり(どこで、こんな顔を覚えたのだろう)、うつぶせになり、座布団を背中に乗せ「座布団ガメ」と言ってみたり。
疲れている時でも、下の子ちゃんを見ていると、くすりと笑って元気が出る。
思わず、「下の子ちゃん、かわいいねえ」と口走ると、「わぁー」と上の子ちゃんが大げさな泣き真似をする。
「私は可愛くないんだー」
いやいや、一言もそんなこと言ってないよ。
上の子ちゃんも、十分にかわいい。
親ばかだけれど、下の子ちゃんがあまりにもかわいいポーズばかりするから、上の子ちゃんがいないときに、こっそり聞いてみた。
「ねえねえ、下の子ちゃん。どうして、そんなにかわいいの?」
下の子ちゃんがどう答えるか、ちょっとした興味もあった。
「それはね」と下の子ちゃんが、はにかみながら答える。
「ママのお腹から生まれたから」
あまりにも完璧な答えに、何も言い返せない。
ただ、頭の中で(自分が育てているのだけれど)どうやって育てたら、こんな子に育つのかしらん、などと思ってしまったのであった。