悩めるママの子育て徒然日記

30代主婦 今年の夏に三人目を出産予定 現在は妊娠糖尿病にかかり、治療中 趣味は料理、散歩、読書 旦那さんからは『悩むことが趣味』と言われている

冷凍バナナ

 我が家では、毎朝、朝食のデザートとしてバナナを食べる。

 けれど、この暑さのせいで、置いてあるバナナの熟成具合が早くなってきてしまった。

 これでは、食べきる前に腐ってしまう。

 そこで、バナナの表面が黒い点々で覆われてきたものは、適当な大きさにちぎって冷凍することにした。

 冷凍しておけば保存がきくし、暑い日の子供ちゃん達のおやつにちょうどいいのだ。

 

 冷凍バナナと言うと、ひとつ怖い記憶がある。

 上の子ちゃんが小さなころ、冷凍バナナを喉に詰まらせたのだ。

 当時、冷凍バナナは喉に詰まらないよう、いつも、薄くスライスしていた。

 けれど、どういうわけか、何かの拍子に呑み込んでしまったらしい。

 最初は、美味しそうにぱくぱくと食べていた。

 それが、途中で、急に喉を抑え始めたのだ。

 様子がおかしいと思い、慌てて傍に駆け寄って気づく。

 大変だ!喉に詰まってる!

 ちょうど、旦那さんがトイレに入っている時だった。

 上の子ちゃんの背中を必死に叩きながら、「早く来て!」とトイレに向かって叫んだ。

 けれど、旦那さんがトイレから出てくる気配はないし、上の子ちゃんの喉からバナナは出てこない。

 どうしよう。

 119番に電話をしたいけれど、その時間さえ惜しい。

 ハイムリッヒ法?

 うろ覚えでやってみるけれど、正確なやり方ではないからか出てこない。

 思い切って、上の子ちゃんを逆さにひっくり返して背中を叩く。

 これもだめだ。

 掃除機を口の中に突っ込むか?

 そんなことで取れる気がしない。

 そのうち、上の子ちゃんの身体が痙攣する。

 どうしよう!

 本当はいけないけれど、一か八かで喉に指を突っ込んだ。

 指先がバナナに触れる。

 そして、ちょうどバナナと喉の間に隙間があることに気付く。

 隙間に指を入れ、指先にバナナを引っかけた。

 指に力を入れて、一気に取り出す。

 取れた!

 上の子ちゃんがごほごほと咳込む。

 私はほっとして泣いてしまった。

 何喰わぬ顔で、旦那さんが部屋に入ってくる。

 私の呼ぶ声が、聞こえていなかったのだ。

 それでも、私は構わず、怒ってしまう。

「あなたがトイレに入っている間に、この子が死ぬかもしれないところだったのよ!」

 ちょっとしたことで、子供の事故は起きる。

 本当に怖い。

 それ以降、バナナは小さく刻んで冷凍することにした。

 

 子供ちゃん達が大きくなってきて、歯が丈夫になったこと、それから、こちらの言うことをちゃんと理解してくれるようになったことを踏まえて、今はバナナを一口サイズよりも大きめにちぎって冷凍している。

 そして、子供ちゃん達には少し溶けかけたバナナを渡すようにし、口の中に一気にいれないこと、少しずつ齧りながらゆっくり食べること、をいつも言い聞かせている。

 

 さて、我が家ではそんな苦い記憶のある冷凍バナナなのだが・・・。

 ある朝のことだ。

 朝食のデザートにバナナを出そうとしたら、何本かのバナナの表面が黒い点々で覆われていた。

 このままだと、あと2,3日もしたら痛んでしまうだろう。

 そう思った私は、冷凍バナナを作ることにした。

 冷凍バナナの作り方は簡単だ。

 ビニール袋に、皮をむいたバナナを一口サイズより大きめにちぎって入れ、冷凍庫に放りこむだけ。

 早速、バナナの皮をむき、ちまちまとバナナをちぎっていると、何やら視線を感じた。

 下の子ちゃんだな、と思う。

 気づかぬふりをして、そのまま作業していたら、今度は踏み台を私の横に持ってきた。

 そして、台の上に乗り、私の手元を覗き込む。

「バナナが沢山ありますねえ」

「だって、上の子ちゃんも下の子ちゃんも、冷凍バナナ好きでしょう?」

 下の子ちゃんは「うん」と頷いて、袋の中に入っているバナナを凝視している。

「今、バナナを見ているの。ジーと見ているの」

 そうだねえ、と私はわざとのんびりした口調で答える。

 下の子ちゃんの言いたいことは、よーくよーく分かっている。

 でもね。あなた、さっき、朝食のデザートにバナナ食べたばかりでしょ。

 私は、そのまま黙々とバナナをちぎる。

 すると、下の子ちゃん。

 次の作戦に打って出た。

「ねえねえ」

 下の子ちゃんが、私の肩をぽんぽんと叩く。

「見て、見て。このお口」

 見てしまうと、下の子ちゃんの目論見通りになりそうな気がして、振り向けない。

「今ね、お口を開けて待ってるの。じーとじーと待ってるの」

 じりじりと、下の子ちゃんが迫って来る。

「バナナが入ってこないかなぁって」

 耐えきれなくなって、笑ってしまう。

 ちらりと下の子ちゃんを見ると、目が合う。

 下の子ちゃんは、口をちゃんと大きく開けて、キラキラした目でこちらを見ている。

 ああ、負けたな。

 私は冷凍庫を開け、すでに凍っているバナナを取り出す。

「お一つ、どうぞ」

 下の子ちゃんはにんまりした顔で、凍ったバナナを受取る。

 そして、口にバナナを押し込もうとする。

「一気に入れたらダメですよ。ゆっくり少しずつ食べてください」

 下の子ちゃんは頷いて、バナナをちまちまと齧り始めた。

 そんな下の子ちゃんを眺めながら、今日も可愛いなあ、なんて思ってしまったのだった。